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2014年11月発行

設題解説 刑 法(二)
植村立郎監修 ISBN 978-4-908108-06-8
書籍コード 312010 新書判 536頁 定価 2,343円(本体 2,130)
 「法曹」に発表された原稿は基本形を維持している。あらかじめお断りしておくと,主として刑法総論に関する同一ないし類似の論点について複数回にわたって説明がされているものが含まれている。各論考の初発の発表は月刊誌「法曹」における一回ごとの発表であったから,その都度の読後感としては,こういった重複的な説明にもさほどの違和感はなかったかもしれない。しかし,今回,各論考を合本して一つの読み物としてみた場合にはどうだろうかと,監修者なりに考えてみた。その結果,各論点はもともと刑法総論における基本的で重要なものであって,刑法を学ぶ初学者を対象に,読者が必須の知識として身に付けるべきものであり,また,重要な論点であるだけに判例や学説にも時代に応じた変化もあるところから,異なる設題,異なる切り口による説明を重ねて,読者に対して是非とも当該論点に関する的確な理解を深めてもらいたいとの解説者側の熱意の表れが積み重なったものと受け止めるのが,最もふさわしいと考えている。読者の側からすれば,一つの設題では説明が十分に理解できなかった場合でも,読み進めていくうちに,当該論点に関する新たな説明に触れて,理解の再確認,深まりを体験することができ,読了すると,当初分かりにくかった説明の意味・内容を自分なりに理解できていることに気付くことになっているのが,本書の狙いであるということになろう。
 そして,解説文を基に,タイトルを付し,論点を抽出して各冒頭に示し,各論考発表後の法改正の内容を反映させたり,内容がより分かりやすくなるように,説明の順序を手直ししたり,誤記等を修正し,字句等の表現を改めたり,読点,句点を増やして文章を短くしたり,改行を増やしたり,各論考間の用語の統一を図るなどの形式面において,監修者の判断で補筆・修正したところがある。また,解説文の作成者については,「解説者」として特定している。
 他方,監修者が新たに付け加えた意見等は,【補論】として,各論考の適宜の箇所を波罫で囲み,あるいは《》を付して挿入した。
(「監修にあたって」より)
目 次
第1章 スリから始まって
一 問題点
二 窃盗未遂罪の成否
三 公務執行妨害罪の成否
四 事後強盗罪の成否
五 結 論
第2章 けんかで殴られて飲酒運転
一 問題点
二 自動車の一時使用と窃盗罪の成否
三 違法性阻却事由について
四 責任について
五 詐欺罪の成否
六 結 論
第3章 盗みをそそのかしたことから始まって
一 論点の整理
二 丙の刑事責任
三 乙の刑事責任
四 丁の刑事責任
五 甲の刑事責任
六 結 論
第4章 年少者に盗みをそそのかしたことから始まって
一 はじめに
二 間接正犯の成否
三 事実の錯誤
四 間接正犯の錯誤
五 賍物収受罪の成否
六 不可罰的事後行為の成否
七 結 論
第5章 盗みをそそのかしたことから始まって(その二)
一 はじめに
二 甲の刑事責任について
三 乙の刑事責任について
四 結 論
第6章 切り合いに行くと誘われて
一 はじめに
二 乙の基本的な刑事責任―共犯と錯誤(共犯の過剰)
三 乙らの行為とAの死亡との因果関係
四 甲の刑事責任―重い故意を持つ者の責任
五 結 論
第7章 夫の浮気相手に仕返ししようとして
一 はじめに
二 Aに対する強姦の点について
三 財布の奪取について
四 結 論
第8章 火災保険金が欲しくなって
一 問題点
二 放火の客体は何か
三 既遂か未遂か
四 甲は正犯としての責任を負うか
五 保険金詐欺の実行の着手の有無
六 まとめ
第9章 兄弟げんかの末に
一 問題点
二 乙の胸部を包丁で切り付けた行為について
三 重症の乙を放置して立ち去った行為について
四 キャッシュカードやメモを持ち去った行為について
五 現金自動支払機から現金の払戻を受けた行為について
六 結 論
第10章 組長をねらって発砲して
一 問題点
二 乙の身体をねらってピストルで発砲した行為について
三 通行人丙に弾が当たって死亡させた行為について(丙に対する殺人罪の成否)
四 乙に対する罪責と丙に対する罪責の関係
五 結 論
第11章 絵画の盗み出しをそそのかして
一 はじめに
二 問題の所在
三 小問(1)について
四 小問(2)について
五 小問(3)について
六 結 論
第12章 配下の組員を痛め付けようとして
一 問題点の所在
二 共同正犯の成立要件と効果
三 方法の錯誤について
四 共同正犯の成立の範囲について
五 罪数について
六 結 論
第13章 少量の毒薬を飲ませようとして
一 問題点
二 Bに毒薬入りのケーキを食べさせたことについて
三 故意のないCをしてBに毒薬入りのケーキを食べさせたことについて
四 Cと共謀してCをしてBに毒薬入りのケーキを食べさせたことについて
五 Cが殺意をもって致死量の毒薬を入れたケーキをBに食べさせたことについて
六 結 論
第14章 友人を後方から呼び止めようとして
一 はじめに
二 違法性阻却事由の検討
三 責任の検討(誤想防衛を中心として)
四 誤想過剰防衛について
五 結 論
第15章 友人との会話に夢中になって脇見運転をしていたら
一 はじめに
二 《過失運転致死傷罪》について
三 死亡との因果関係について
四 結 論
第16章 金品を盗んでくるようにそそのかし・そそのかされて
一 はじめに
二 共犯独立性説と共犯従属性説
三 実行従属性について(小問(1))
四 要素従属性について(小問(2))
五 事後強盗罪について(小問(3))
六 共犯と錯誤について(小問(3))
七 結 論
第17章 二人で強盗に入ることを共謀して
一 はじめに
二 共同正犯の意義
三 共同正犯の正犯性
四 共謀共同正犯の成否について
五 共同正犯の成立要件
六 本問(第(1)問)の検討
七 共犯関係からの離脱について
八 本文(第(2)問)の検討
第18章 駅ホームのベンチのカメラを持ち去ると
一 はじめに
二 甲の罪責
三 乙の罪責
四 丙の罪責
第19章 貸し金の取り立てで
一 はじめに
二 恐喝罪(未遂罪)の成否
三 傷害罪の成否
四 傷害と死との因果関係
五 同因果関係に関する判例と学説
六 まとめ
第20章 殺害の意図でけん銃で弾丸を一発発射して
一 はじめに
二 方法の錯誤について
三 故意の個数について
四 中止未遂について
五 結 論
第21章 路上に倒れている女性と(介抱している)男性を通りがかりに見て
一 はじめに
二 正当防衛の成否
三 誤想防衛の成否
四 誤想過剰防衛の成否
五 自首の成否
六 結 論
第22章 キャンプで,朝,目が覚めたら
一 はじめに
二 不真正不作為犯の実行行為性
三 法的作為義務
四 作為の可能性・容易性
五 既発の危険を利用する意思
六 設題前半部分の検討
七 法的作為義務の錯誤
八 設題後半部分の検討
第23章 自分の土地を二人の人に売却してしまって
一 はじめに
二 甲の罪責について(横領罪の成否)
三 乙の罪責について
第24章 一三歳の長男に強盗を指示して
一 はじめに
二 乙の罪責について
三 甲の罪責について
四 共謀共同正犯,教唆犯について
五 まとめ
第25章 自動車を運転して人身事故を起こしてしまって
一 はじめに
二 不真正不作為犯の問題状況
三 不真正不作為犯の実行行為性
四 不真正不作為犯が成立する要件
五 設題の検討
六 おわりに
第26章 金品窃取を共謀して
一 はじめに
二 共謀とは何か―共同正犯の正犯性―
三 共犯関係からの離脱
四 共同正犯の中止
五 設題の検討
六 おわりに
第27章 口論が一転してけん銃の発射へ
一 問題の所在
二 甲の罪責について
三 乙の罪責について―偶然防衛―
四 おわりに
第28章 不仲の相手を突き刺したが
一 問題の所在
二 甲の罪責について
三 乙の罪責について(抽象的事実の錯誤)
四 おわりに
第29章 侵入強盗を共謀したが
一 問題の所在
二 共同正犯の正犯性について
三 共犯関係からの離脱について
四 共同正犯の中止について
五 設題についての検討
六 おわりに
第30章 誤って身の危険を感じてしまい
一 問題の所在
二 誤想防衛について
三 誤想過剰防衛について
四 その他
五 設題についての検討
六 おわりに
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