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共犯者の供述の信用性 (平成8年7月刊行)
司法研修所編 ISBN 978-4-908108-47-1
書籍コード 08-15 A5判 404頁 定価 3,204円(本体 2,913)
CONTENTS
第1部 序説
第1 問題の所在
第2 共犯者の供述の証拠能力,証明力の一般的問題
1 証拠能力
2 証明力(信用性)
第3 本研究について
第2部 全体的注意則
第1 共犯者の供述の信用性を判断するに当たって留意すべき外在的事情
1 共犯者の供述が事件全体で占める位置と程度(事件全体の証拠構造との関連)
2 共犯供述をすることによって得る利益・不利益の内容・程度
3 共犯者の属性
4 特に問題となる間接事実
第2 共犯者の供述の信用性を判断するに当たって検討すべき個々的事項
1 他の証拠との符合性の検討
2 供述内容自体の検討
3 供述経過の検討
4 供述態度の検討
第3 総合評価
1 分析と総合
2 共犯供述の核心部分に問題点が存在する場合
3 共犯供述の核心部分以外に問題点が存在する場合
第3部 手続上の問題
第1 弁論の分離・併合の相当性
第2 共犯者の供述の取調方法の問題点
1 証人尋問
2 共同被告人としての被告人質問
3 共犯者の捜査官に対する供述調書,他の公判における供述(公判調書)の取調べ
第3 供述経過の立証上の問題
1 捜査段階における共犯者の供述の経過
2 共犯者の捜査段階における供述を取り調べることの要否
3 供述経過の立証の工夫
附属資料 I 事例カード
1 〔肯定6〕マニラ保険金殺人事件
2 〔肯定18〕窃盗教唆事件
3 〔肯定34〕保険金目的放火事件
4 〔肯定60〕暴力団組長賭博参加事件
5 〔肯定62〕淡路島生き埋め殺人事件
6 〔肯定81〕暴力団抗争殺人事件
7 〔否定4〕日本岩窟王事件
8 〔否定7〕八海事件
9 〔否定13〕対立暴力団組長殺害教唆事件
10 〔否定14〕岩国の暴力団首領殺害事件
11 〔否定15〕梅田事件
12 〔否定23〕山中事件
13 〔否定37〕苫小牧市の贈賄事件
14 〔否定46〕覚せい剤空路密輸入事件
附属資料II 裁判例一覧表
第1 信用性肯定例
第2 信用性否定例

没収保全及び追徴保全に関する実務上の諸問題
司法研修所編 ISBN 978-4-908108-48-8
書籍コード 16-03 A5判 270頁 定価 2,672円(本体 2,429)
 本研究は,国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下「麻薬特例法」という。)上の薬物犯罪収益等及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)上の犯罪収益等に係る没収保全及び追徴保全に関する実務上の諸問題を対象とする。
 平成11年に成立した組織的犯罪処罰法は,没収保全及び追徴保全の対象となる罪の範囲を,それまでの麻薬特例法が対象としていた薬物犯罪ばかりでなく他の多くの犯罪に拡大したため,これに伴い没収保全及び追徴保全の制度が利用される事例が増加するものと予想されていたが,現実にはこれまでのところ,組織的犯罪処罰法上の没収保全及び追徴保全については実例が極めて少ない。そこで本研究においては,麻薬特例法を中心に検討し,組織的犯罪処罰法については付随的に検討したが,条文としては麻薬特例法が組織的犯罪処罰法を準用する形式となっていることから,記述の順序が逆になっている部分もある。主として起訴前・起訴後の没収保全及び追徴保全について検討し,その余の付随的裁判(附帯保全,強制執行の停止,没収保全等の期間の更新,取消し,不服申立て等)については,実例が乏しいこともあり,第5章及び第9章において簡潔に触れるにとどまった。なお,麻薬特例法や組織的犯罪処罰法には保全執行裁判所における手続に関する規定が少なくないが,民事手続上の問題であるので本研究の対象からは除外した。また,これまでのところ実例の見られない国際共助手続等についても割愛した。
 内容としては,まず,没収保全及び追徴保全の制度や運用の概要について見た上で,没収保全及び追徴保全を発令する前提となる,薬物犯罪収益等の没収及び追徴に関する実体法上・公判手続上の問題点について検討した。次いで,最高裁判所事務総局刑事局に対して報告のあった没収保全及び追徴保全の決定例等を分析し,民事の仮差押え・仮処分についての基礎的な議論を踏まえて,没収保全及び追徴保全を発令する際に実務上生じる問題点について検討した。さらに,刑事裁判資料第277号「犯罪収益に係る保全手続等に関する規則」及び「薬物犯罪等に係る保全手続等に関する規則」の解説及び関係執務資料113頁以下の「没収・追徴保全手続等マニュアル」の内容を盛り込み,実務上の手引としても用いられるよう配慮した。一般的な解説は,財団法人法曹会発行「麻薬特例法及び薬物四法改正法の解説」及び同「組織的犯罪対策関連三法の解説」によった部分が多いが,それらの内容に疑問点等がある場合にはその都度検討した。本文でも触れたが,これまでのところ,没収保全及び追徴保全の運用には相当に偏りがあり,規定は多々用意されているものの,ほとんど全く活用されていない分野が少なくない。これらについても,関係条文を一読すれば,疑問点,問題点は多々浮かんでくるが,実務の参考に供する資料を作成するという本研究の趣旨に照らし,実務の運用がある程度蓄積されている分野に限り,いわゆる論点を中心に取り上げることとした次第である。その意味で,体系的・網羅的な研究には程遠いし,一般の刑事裁判実務から縁遠い分野につき少しでも有用なものをという我々の当初のもくろみからしても甚だつたない内容のものではあるが,この点は御了承願いたい。(本書はじめにより)
 執筆者は,平成13年度司法研究員,井上弘通,西田時弘の各氏です。
目 次
第1章 制度の概要
第1節 平成11年改正後の条文の構成と用語の変更等
(新旧対照表)
第2節 手続の概要
第1 没収保全
第2 追徴保全
第3節 運用の概要
第2章 没収保全の理由(麻薬特例法19条1項,組織的犯罪処罰法22条1項)
第1節 没収対象財産
第1 麻薬特例法上の薬物犯罪収益等の意義
1 規制薬物(麻薬特例法2条1項)
2 薬物犯罪(麻薬特例法2条2項)
3 薬物犯罪収益(麻薬特例法2条3項)
4 薬物犯罪収益に由来する財産(麻薬特例法2条4項)
5 薬物犯罪収益等(麻薬特例法2条5項)
第2 組織的犯罪処罰法上の犯罪収益等の意義
1 犯罪収益(組織的犯罪処罰法2条2項)
2 犯罪収益に由来する財産(組織的犯罪処罰法2条3項)
3 犯罪収益等(組織的犯罪処罰法2条4項)
第3 薬物犯罪収益等の根拠となるべき犯罪行為
1 業として行う不法輸入等の罪(麻薬特例法5条(改正前の麻薬特例法8条))
2 薬物犯罪収益等隠匿の罪(麻薬特例法6条(改正前の麻薬特例法9条))
3 薬物犯罪収益等収受の罪(麻薬特例法7条(改正前の麻薬特例法10条))
4 規制薬物としての物品の輸入等の罪(麻薬特例法8条(改正前の麻薬特例法11条))
5 あおり又は唆し(麻薬特例法9条(改正前の麻薬特例法12条))
第4 犯罪収益の根拠となるべき犯罪行為
1 不法収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為の罪(組織的犯罪処罰法9条)
2 犯罪収益等隠匿の罪(組織的犯罪処罰法10条)
3 犯罪収益等収受の罪(組織的犯罪処罰法11条)
第5 薬物犯罪収益等の没収
1 薬物犯罪収益等の没収(麻薬特例法11条(改正前の麻薬特例法14条))
2 薬物犯罪収益等が混和した財産の没収等及び没収の要件等(麻薬特例法12条(改正前の麻薬特例法15条及び16条))
3 薬物犯罪収益の推定(麻薬特例法14条(改正前の麻薬特例法18条))
4 薬物犯罪収益等の没収に関するその他の問題
第6 犯罪収益等の没収
1 犯罪収益等の没収(組織的犯罪処罰法13条)
2 犯罪収益等が混和した財産の没収等(組織的犯罪処罰法14条)
第2節 没収対象財産に当たると思料するに足りる相当な理由
第3章 没収保全の必要性(組織的犯罪処罰法22条1項,麻薬特例法19条1項)
第4章 没収保全の主文(組織的犯罪処罰法22条3項,麻薬特例法19条4項)
第1節 没収保全の記載事項(組織的犯罪処罰法22条3項,麻薬特例法19条4項)
第2節 実務上問題となる事項
第5章 没収保全の手続
第1節 起訴前の没収保全に関する手続
第1 起訴前の没収保全(組織的犯罪処罰法23条1項,22条1項,麻薬特例法19条3項,1項)
1 請求の受理
2 審査
3 没収保全命令を発する場合
4 請求を却下する場合
第2 附帯保全(組織的犯罪処罰法23条1項,22条2項,麻薬特例法19条3項,2項)
1 請求の受理
2 審査
3 附帯保全命令を発する場合
4 請求を却下する場合
第3 強制執行の停止(麻薬特例法19条4項,組織的犯罪処罰法38条)
1 請求の受理
2 審査
3 停止を命ずる場合
4 請求を却下する場合
第4 没収保全期間の更新
1 請求の受理
2 審査
3 期間を更新する場合
4 請求を却下する場合
第5 代替金
第6 事情届及び供託書正本の取扱い
第7 没収保全命令,附帯保全命令又は強制執行停止決定の取消し
第8 没収保全期間の経過(失効)に伴う事務
第9 公訴提起の通知を受けた場合の事務
第10 保全に関する不服申立て
第2節 公訴が提起された裁判所の没収保全に関する手続
第1 処分の主体
第2 起訴前の没収保全の効力の存続の有無の審査
1 当該被告人に起訴前の没収保全がある場合
2 共犯に対する公訴提起の場合
第3 没収保全
第4 附帯保全
第5 強制執行の停止
第6 代替金
1 代替金納付許可請求の受理
2 審査
3 代替金の納付を許可する場合
4 代替金納付許可請求を却下する場合
5 不服申立て
6 代替金納付の申出があった場合
7 納付後の措置
第7 事情届及び供託書正本の取扱い
1 債務者から事情届が提出された場合
2 没収保全命令を発した裁判所から事情届及び供託書正本の送付を受けた場合
第8 没収保全命令の取消し
1 請求の受理
2 審査
3 取り消す場合
4 請求を却下する場合
5 取消しの裁判が確定した場合
第9 附帯保全命令の取消し
1 請求の受理
2 審査
3 取り消す場合
4 請求を却下する場合
5 取消しの裁判が確定した場合
第10 強制執行停止決定の取消し
1 請求の受理
2 審査
3 取り消す場合
4 請求を却下する場合
第11 保全に関する不服申立て
第12 没収の裁判と没収保全
1 没収の裁判と没収保全との関係
2 無罪等の裁判の告知があった場合
3 没収の裁判が確定した場合
第6章 追徴保全の理由(麻薬特例法20条1項,組織的犯罪処罰法42条1項,43条1項)
第1節 追徴の実体的要件
第1 麻薬特例法上の「追徴すべき場合」の意義
1 麻薬特例法13条
2 薬物犯罪収益の追徴と薬物犯罪収益に由来する財産の没収との関係
3 追徴価額算定の基準時
第2 組織的犯罪処罰法上の追徴
第3 追徴に関するその他の問題
第2節 追徴すべき場合に当たると思料するに足りる相当な理由
第3節 起訴前,起訴後の追徴保全の相違
第7章 追徴保全の必要性(麻薬特例法20条1項,組織的犯罪処罰法42条1項)
第8章 追徴保全の主文(組織的犯罪処罰法42条2項から4項まで,麻薬特例法20条3項)
第1節 追徴保全の記載事項(組織的犯罪処罰法42条4項,麻薬特例法20条3項)
第2節 実務上問題となる事項
第9章 追徴保全の手続
第1節 起訴前の追徴保全に関する手続
第1 追徴保全
1 請求の受理
2 審査
3 追徴保全命令を発する場合
4 請求を却下する場合
第2 追徴保全期間の更新
1 請求の受理
2 審査
3 期間を更新する場合
4 請求を却下する場合
第3 追徴保全解放金の受理
第4 追徴保全命令の取消し
第5 追徴保全期間の経過(失効)に伴う事務
第6 公訴提起の通知を受けた場合の事務
第7 保全に関する不服申立て
第2節 公訴が提起された裁判所の追徴保全に関する手続
第1 処分の主体
第2 起訴前の追徴保全の効力の存続の有無の審査
第3 追徴保全
第4 追徴保全解放金の受理
第5 追徴保全命令の取消し
1 請求の受理
2 審査
3 取り消す場合
4 請求を却下する場合
5 取消しの裁判が確定した場合
第6 保全に関する不服申立て
第7 追徴の裁判と追徴保全
1 追徴の裁判の言渡しがあった場合
2 無罪等の裁判の告知があった場合
資料編 決定例

難解な法律概念と裁判員裁判
司法研修所編 ISBN 978-4-908108-45-7
書籍コード 21-04 A5判 304頁 定価 4,662円(本体 4,238)
[「はじめに〜研究の目的と趣旨」より]
 裁判員は,重大な刑事事件について,公判の審理に立ち会い,評議に出席して,事実の認定,法令の適用,刑の量定について意見を述べることにより,裁判体の判断に直接関与する。裁判員が自ら主体的・積極的に関与することが不可欠となるわけであり,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号。以下「裁判員法」という。)51条,66条5項等の諸規定も,このような関与を可能とする「裁判員に分かりやすい審理」を目的としたものである。すなわち,裁判員裁判においては,法律の予備知識がなくとも,事実の認定,法令の適用,刑の量定について,裁判員がその意味するところを理解した上で意見を述べることを可能とするような審理を実現することが要請されている。
 もっとも,それは,単に専門用語を分かりやすい言葉に置き換えた審理をすることを意味しない。法律概念には,その本当に意味するところを正確に表現する定義,定義を構成する要件があり,それは実体法とそれが適用される様々な社会的事例に対応した裁判例によって意味が付与されている。これは刑事裁判の世界の先賢の叡智の結集といってよい。もちろん,分かりやすい言葉への言い換えを工夫することは意味あることであるが,用語・法律概念の定義・要件を平易な日本語で言い換えてもことの本質を伝達しきれるものではないことは,その定義・要件がいかに成立し,形成されてきたかを考えても自明の理であろう。用語・法律概念の本質的な理解が不十分なまま,置き換えられた言葉のイメージや表面的なニュアンスだけで議論するというようなことがあってはならない。
 本研究は,裁判員に分かりやすい審理の実現のために,専門用語の平易化という道を選ぶのではなく,各用語・法律概念の本当に意味するところを,刑事法に関するこれまでの研究成果と裁判例を分析することによって検討し,これを裁判員に伝えるための説明方法を考えようとするものである。これまで実務で蓄積された判断の内容や手法について,なぜそのように判断してきたのかという実質的なところを説明することによって,実務において用いられてきた物差しを示した上,これを踏まえた審理・評議を行って議論を尽くし,場合によってはその物差しの当否をも検討するなどして,はじめて充実した審理・評議が可能になると考える。
 裁判員に説明を要する難解な用語・法律概念は多数にのぼる。また,同じ概念であっても,当事者の主張の仕方や争点により説明方法も異なる。裁判所と両当事者により,具体的な事案や争点に応じた説明方法をその都度検討するという作業が必要となるのである。本研究においては,これまでに行われてきた模擬裁判の結果等を踏まえ,裁判員対象事件で扱われる機会が多いと見込まれる,殺意,正当防衛,責任能力,共謀共同正犯(正犯と従犯の区別),そしてやや特殊な問題として少年の刑事事件における保護処分相当性を取り上げたが,これらの概念は,上記の方法論を検討するに当たっての素材にすぎない。
 本研究の過程では,一定の概念について,必ずしも共通の理解の下に審理・判断されていないのではないかというものもあるように思われた。この研究の難しさは,そのような点にも一因があると考えるが,裁判員に示す物差しとしては,共通の理解とされている部分,本当に意味するところとされている基本的な部分である必要があろう。このような観点から,学説や裁判例を分析し,司法研修所の研究会における意見交換,各地で行われた模擬裁判の結果,あるいは裁判員役として参加された方々の御意見をも参考にさせていただきつつ,議論を重ね検討を続けた現段階での結果が,本研究報告である。
 本研究報告は,もとより各概念に関連する判例の総合的評釈ではないし,民事訴訟における要件事実に相当する事項を列挙したものでもない。また,裁判員に分かりやすい審理の網羅的マニュアルでもないし,そのまま活用することを目的とした実践的マニュアルでもない。裁判員が理解に困難を生じることが考えられる典型的な概念を素材としつつ,難解概念の説明方法やそれを踏まえた審理方法を探求するための一つのヒントを示そうとするものである。その際には,当該概念の本当に意味するところを追求した上,それを理解するために主張・立証が求められる事実,更には主張・立証が必要とされる理由という点を特に意識して顕在化するということも必要となろう。また,複雑な法律解釈のときには,何を判断の対象とすれば分かりやすいのかという視点も大切であろう。そして,このような研究の方法や結果が,それぞれの事案において,分かりやすい審理の実現のために,公判前整理手続,公判審理,評議の各場面で法曹三者が何をしなければならないかを具体的に考える契機になればと思われる。
 なお,研究の成果を多くの方に活用していただくため,本報告本文は,結論と簡単な理由を記載した比較的短いものとし,研究のために参考にした学説や裁判例,模擬裁判での裁判員役の方々の御意見等については,本文から検索が容易な形式で資料編として編纂した。
目 次
第1 本 編
1 総 論
(1) 法律概念が難解な要因等
ア 法律概念の定義・要件の難しさ
イ 法律概念の当てはめの難しさ
ウ 検討対象とした法律概念
(2) 難解な法律概念が問題となる裁判員裁判の審理
ア 裁判員裁判における審理の在り方
イ 難解な法律概念が問題となる裁判員裁判の審理で留意すべき事項
(ア) 難解な法律概念の本当に意味するところに立ち返った説明
(イ) 法律概念に関する判断対象の簡素化,明確化
(ウ) 法律概念に関する当事者の主張の実質化
(エ) 法律概念についての共通認識と反復的説明
2 各 論
(1) 殺意
ア 問題の所在
イ 殺意の本当に意味するところに立ち返った説明
(ア) 殺意,特に未必の殺意に関する学説
(イ) 裁判例における殺意のとらえ方
(ウ) 裁判員に対する殺意の説明の在り方
ウ 殺意を判断する上で重視されるべき要素及びその位置付け
エ 殺意が争われる場合の当事者の主張の在り方
(2) 正当防衛
ア 問題の所在
イ 正当防衛の判断対象の簡素化・明確化
(ア) 争点に応じた判断対象の設定
(イ) 基本的な類型(侵害の予期がなく防衛意思に争いがない類型)
(ウ) 被告人の加害意思が争点となる類型
I 侵害の予期があり積極的加害意思があった旨の主張
II 侵害の予期はなかったが専ら攻撃の意思であった旨の主張
III 防衛行為の相当性の主張
(エ) けんか闘争・挑発行為等が争点となる類型
(オ) 誤想防衛等が争点となる類型
ウ 正当防衛が争われる場合の当事者の主張の在り方
(3) 責任能力
ア 問題の所在
イ 責任能力の本当に意味するところに立ち返った説明
ウ 責任能力が争われる場合の当事者の主張の在り方
エ 関連する概念等の説明
オ 責任能力に関する鑑定手続の在り方
(ア) 鑑定意見の在り方
(イ) 口頭報告の活用
(ウ) 口頭報告の方法
(エ) 事前カンファレンスの活用
(オ) 複数鑑定の問題
I 捜査段階の鑑定
i 捜査段階の正式鑑定
ii 簡易鑑定
II 公判前整理手続段階の鑑定
i 鑑定資料
ii 条件付き鑑定
iii 鑑定人の公判立会い
iv 再鑑定
III 複数鑑定が避けられなかった場合
(4) 共謀共同正犯(正犯と従犯の区別)
ア 問題の所在
イ 共謀共同正犯の本当に意味するところに立ち返った説明
 ウ 共謀共同正犯の成否を判断する上で重視されるべき要素及びその位置付け
(5) 少年法55条の保護処分相当性
ア 問題の所在
イ 保護処分相当性に関する主張・立証の在り方
ウ 社会記録の取扱い
3 終わりに〜研究の結果と今後の展望
第2 資料編
資料1-1 「故意に関する学説状況」
資料1-2 「犯行態様ごとの殺意の判断要素及びその軽重の分類」
資料1-3 「模擬裁判(いわゆる谷川−事件)における殺意の説明例と裁判員の感想等」
資料1-4 「刃物による殺人事犯における殺意に関する裁判例一覧」
資料2-1 「正当防衛に関する裁判例分析一覧表」
資料2-2 「模擬裁判(いわゆる山本純子事件)における正当防衛の説明例と裁判員の感想等」
資料2-3 「正当防衛の主な争点に関する裁判例の整理」
資料2-4 「正当防衛に関する裁判例分析詳細表」
資料3-1 「模擬裁判(いわゆる森一郎事件)における責任能力の説明例と裁判員の感想等」
資料3-2 「責任能力に関する裁判例分析一覧表〜」
資料3-3 「責任能力に関する裁判例分析詳細表〜」
資料3-4 「責任能力が問題となった裁判実例の類型〜」
資料3-5 「責任能力が求められる理由及び医療観察法上の制度の説明案」
資料3-6 「裁判員制度における精神鑑定に関するアンケート集約結果」
資料4-1 「共同正犯に関する裁判例分析一覧表」
資料5-1 「衆議院法務委員会における提案者の答弁」

平成19年版 刑事判決書起案の手引
司法研修所編 ISBN 978-4-908108-49-5
書籍コード 19-12 A5判 152頁 定価 2,035円(本体 1,850)
 この「手引き」は,司法修習生の判決起案の参考として作ったものである。最初第14期の前期に謄写版刷りで配布したものに,その後の改訂を施し,さらに改訂を加えて(再訂・昭和39年1月,3訂・昭和42年3月,4訂・昭和47年9月,5訂・昭和54年1月,6訂・昭和60年12月,7訂・平成4年11月,8訂・平成9年11月,平成13年版・平成13年1月,平成17年版・平成17年12月)現在に至っている。
 窃盗罪等に罰金刑を新設するなどの法律改正や実務の実情等を踏まえて,必要と思われる範囲で改訂を行った。
目 次
第1章 総 説
第1 判決書作成の根拠及び目的
第2 判決書と判決宣告との関係
第3 判決に付すべき理由
第4 配列・文体・用字・用語等
第5 作成後の点検
第2章 有罪判決
第1節 前文その他
第1 表 題
第2 被告人の表示
第3 前 文
第4 後 文
第2節 主 文
第1 主 刑
第2 未決勾留日数の本刑算入
第3 労役場留置
第4 刑の執行猶予
第5 保護観察
第6 補導処分
第7 没 収
第8 追 徴
第9 被害者還付
第10 仮納付
第11 訴訟費用の負担
第12 公民権の不停止又は停止期間の短縮
第13 刑の執行の減軽又は免除
第14 刑の免除
第15 一部無罪・一部免訴・一部公訴棄却
第16 主文の配列
第3節 事 実
第1 摘示すべき事実の範囲
第2 事実摘示の方法・程度一般
第3 故 意
第4 過 失
第5 未 遂
第6 共同正犯
第7 教唆犯及び従犯
第8 刑の減免事由
第4節 証 拠
第1 証拠挙示の対象となる事実
第2 証拠の挙示方法
第3 挙示すべき証拠の範囲
第4 挙示した証拠と認定事実との関係
第5 証拠挙示の形式
第6 証拠の標目列挙の順序
第7 個々の証拠の標目の表示方法
第5節 累犯前科及び確定裁判
第1 累犯前科
第2 確定裁判
第3 累犯前科と確定裁判との混合型
第6節 法令の適用
第1 法令の適用の意義及び根拠
第2 法令適用の形式一般
第3 構成要件及び法定刑を示す規定の適用
第4 科刑上の一罪の処理
第5 刑種の選択
第6 累犯加重
第7 法律上の減軽
第8 併合罪の処理
第9 酌量減軽
第10 宣告刑の決定
第11 未決勾留日数の本刑算入
第12 労役場留置
第13 刑の執行猶予・保護観察・補導処分
第14 没収・追徴・被害者還付
第15 仮納付
第16 訴訟費用
第17 公民権の不停止又は停止期間の短縮
第18 刑の執行の減軽又は免除
第19 刑の免除
第7節 訴訟関係人の主張に対する判断
第1 法335条2項の主張に対する判断
第2 その他の主張に対する判断
第8節 量刑の理由
第9節 一部無罪・一部免訴・一部公訴棄却の理由
第3章 無罪・免訴・公訴棄却・管轄違いの判決
第1節 無罪の判決
第2節 免訴の判決
第3節 公訴棄却の判決
第4節 管轄違いの判決
第4章 「罪となるべき事実」の記載例
第1 公務執行妨害
第2 逃 走
第3 放 火
第4 住居侵入
第5 通貨偽造
第6 文書偽造
第7 有価証券偽造
第8 支払用カード電磁的記録不正作出
第9 強 姦
第10 賭 博
第11 贈収賄
第12 殺 人
第13 暴行・傷害
第14 危険運転致死傷
第15 業務上過失致死傷
第16 脅 迫
第17 窃 盗
第18 強 盗
第19 事後強盗
第20 強盗致死傷
第21 強盗強姦
第22 詐 欺
第23 背 任
第24 恐 喝
第25 横 領
第26 盗品譲受け等
第27 器物損壊
第28 銃砲刀剣類所持等取締法違反
第29 覚せい剤取締法違反
第5章 判決書の例